凸と凹「登録先の志」No.37:三好映里奈さん(認定NPO法人葵風 事務局長)
最も衝撃だったのは、目に見えない子どもたちのつらさ
葵風では、放課後等デイサービスの事務や子ども食堂など、さまざまな業務を担当しています。代表の月東と姉妹ということがかかわり始めたきっかけでした。自分の子どもが小さい時に言葉の不安があり、周りに助けてもらった経験があったので、抵抗なく活動に入っていくことができました。
活動していくうちに知らなかった事実が見えてきて、この活動の必要性を感じるようになりました。最も衝撃だったのは、目に見えない子どもたちのつらさでした。子ども食堂に来る子で、大人しかいない時間帯に来る子が何人もいたりします。学校に行くのがつらいのかな、友達がいないのかなとつい考えてしまいます。少しずつ、他の子どもと一緒に活動できるようになっていく姿を見ると、うれしくなります。
すごく笑いながら話をしてくれたりして、心を開いてくれているように見えても、約束した時間に来なかったり、実は心を開けない子がいます。ごはんは食べさせてもらっているし、寝るところもあるけれど、放置の状態で親とほとんど会話がない、児童相談所に相談する一歩手前という家庭もあります。親は子どもが学校に行っているから何も問題はないと思っているようです。お母さんがお母さんになり切れていないのかもしれません。子どもたちが心を開いてくれるまで時間がかかるので、長い目で見ていく必要があると感じています。
地域の目があることで見守っていくことができる
日々の生活の中で、子どもたちがちょっとしたSOSを出していたりします。ぱっと見は普通に遊んでいる子が多いので、見えにくさがありますが、スーパーや公園で遊んでいる姿を見た時に、服がちょっと薄汚れていたり、サイズが違う物を着ていたり、気づくきっかけはちょっとしたことです。違和感を覚えたら、周りが一歩踏み出してほしいなと思います。
ただ、変に話しかけてしまうと、今どき不審者扱いされてしまうし、よかれと思って声をかけても拒否されてしまったりして、難しさがあります。近所の民生委員など、近くの方で子どもたちを見ていくことが大事だと思っています。私でもいまだに戸惑うので、通報などは難しいと思いますが、地域の目があることで見守っていくことができると感じています。
親御さんのケアも必要ですが、「困っていない」と言われてしまうことも多くあります。そんな時は食支援のアプローチから入って、徐々に心を開いてもらえるようにしています。お母さんたちも食べ物を持ってきたと言うと、訪問してピンポンした時に、ドアを開けてくれることがあります。
子どもが子どもでいられる時間はすごく短い
今、子ども食堂はすごく増えていて、緊急の対応をしているところもあります。一方で、本当に困っている方が来ているのかという問題もあります。子ども食堂をやっている方も、みんながみんな善意ではないというのも見えてきています。福祉はお金儲けが目的ではない世界だけど、助成金等も取れやすくなっていて、お金がとりあえずもらえてしまう側面もあります。
これまで9年ほど活動してきた中で印象的だったのは、外とのかかわりを持つことで変わっていった子どもの姿です。中学校にあまり行けていなかった子がいて、行けたとしても私服で11時ぐらいにふらふら学校に行っているような状態でした。子ども食堂の手伝いは積極的にやってくれていた子で、今年高校生になって学校へ行けるようになり、約束を守ってくれるようになりました。
子どもでいられる時間はすごく短くて、その間に育まれることは大人の10年と同じではありません。その時間で育まれたものが根本となって大人になってしまいます。だからこそ、早く助けてあげたい。できる限り早く介入して、早く解決してあげたいと思います。
取材者の感想
特に心に残ったのは、「目に見えない子どもたちのつらさ」という言葉でした。家庭には食事も寝る場所もあるけれど、親との会話がなく、誰にも気づかれないまま孤独を抱えている子どもたちがいます。そんな子どもたちに、急がず、焦らず、少しずつ寄り添いながら関係を築いていらっしゃる姿が目に浮かびました。実際に行動するには勇気が必要ですが、地域の目やちょっとした関わりが、子どもたちを見守ることにつながるのだと、大人一人ひとりが意識することがまず大切なのだと感じました。子どもが子どもでいられる時間の尊さを、改めて痛感したインタビューでした。(長谷川)
三好映里奈さん:プロフィール
認定NPO法人葵風 事務局長
短大で小学校教諭・幼稚園教諭の資格取得後、岡崎市内の幼稚園に勤務。その後、姉が立ち上げた認定NPO法人葵風の放課後等デイサービスのスタッフ・事務局として働きながら、保育士の免許を取得。岡崎市内にある「いわづハウス」で、子ども食堂・パントリー活動を通じて、地域の子どもたち・障がいのある子どもたちの居場所になるようにと願って活動している。
認定NPO法人葵風は、凸と凹「マンスリーサポートプログラム」の登録先です。
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