凸と凹「登録先の志」No.36:内田美香さん(一般社団法人ウィメンズ・フォーラムくまもと 理事)


子育てしながら輝ける人が、もっと増えていかないといけない


この活動に参加するきっかけとなったのは、ウィメンズ・フォーラムくまもとの母体組織であるミューズプランニングへ20年前に入社したことでした。子育て真っ最中の時に、子育て情報誌のライターとして加入しました。入社して7年ほど経った頃、ひとり親の方の在宅就業に取り組む大きなプロジェクトに、トレーナーとして2年間かかわることになりました。

当時は私自身が離婚を考えている時期でもありました。ひとり親の方の困難を目の当たりにして以来、ひとり親の支援にずっと携わっています。これまで「(ひとり親に)自己責任でなったんでしょ」という言葉を何度も耳にしてきました。根底には女性蔑視の問題、男女共同参画の課題があると感じています。

そういった社会の背景を変えていくには、「子育てしながら輝ける人が、もっと増えていかないといけない」と思い、キャリアコンサルタントの資格も取って、もっと寄り添えないかなと考えてきました。今は熊本地震で最も被害の大きかった益城町で、地元の熊本県ひとり家庭福祉協議会の支部として益城ひとり親の会を立ち上げ、連携して活動しています。


地域に根ざして本人に寄り添うことが必要


困難を抱えるひとり親の悩みは金銭面だけではありません。子どもの不登校のことや自身のメンタル不調など、多重に悩んでいるケースが多くあります。そういった悩みに対応するには、単なる就業支援だけでは足りません。いろいろな団体が多方面にかかわることで解決するのではないかと思い、ウィメンズ・フォーラムくまもとを立ち上げました。

熊本でもひとり親家庭福祉協議会等がさまざまな支援活動を行っており、支援の取り組みはある意味十分にあると言えます。でも、実際にはそういった相談窓口に自分で行けない人も多くいます。相談に行こうと思っても、ダブルワークやトリプルワークの方は、窓口に行く時間すら確保することができません。そのため支援にはつながらず、経済的に困窮していく負の連鎖にはまってしまいます。だからこそ、地域に根ざして本人に寄り添うことが必要ではないかと思っています。


最後の砦として機能していきたい


2016年の熊本地震とその後のコロナ禍は、ひとり親の方に影響が大きく、今もすごく苦しい状況にあるため、継続的な支援が必要です。

これまでかかわってきたひとり親の方で、悩みを共有できずに苦しむ人を見て、救えない方もいることを痛感しました。親御さんが亡くなって、子どもだけが取り残されたケースもあります。その子は今大学生になりましたが、いろいろな人がかかわりながらずっと見守っています。現実として身近に救えない人がいたというのが大きく、最後の砦として機能したいという思いを強く持っています。

最近は、国からのひとり親支援の手当が拡充されるようになってきていますが、「困った」という声をたくさん聴きます。お金を配るだけでは根本的原因は改善されず、満たされていない部分があるようにも感じています。その人が何を必要としていて、どこにどうつなげば改善されるか、一人ひとりの話に耳を傾け、支える必要があります。支援を必要としている方に寄り添い続けるための取り組み「くまもとシェアステーションプロジェクト」をぜひ応援してください。


取材者の感想


ひとり親に限らず、子育ての悩みに耳を傾ける中で、「活動をもっと深化させていかなければならない」と感じるようになったと話していた内田さん。インタビューを通して、困難を抱える方やつらい思いをしている方に「なんとか寄り添いたい」という強い想いが伝わってきました。

特に印象的だったのは、相談窓口に行く時間すら取れないひとり親が多いという現実です。支援の仕組みがあっても、それが届かなければ意味がありません。だからこそ、地域に根ざし、本当に必要としている人に手を差し伸べる内田さんたちの取り組みの重要性を、改めて実感しました。(長谷川)


内田美香さん:プロフィール


一般社団法人ウィメンズ・フォーラムくまもと 理事

大学卒業後、熊本で地場企業に就職後に出産、退職。2003年、有限会社ミューズプランニングに入社し、子育て・生活情報誌の編集、女性や子どもの支援事業に従事。2019~22年、熊本市の男女共同参画センターに出向し、女性リーダー育成や男女共同参画推進事業に取り組む。2021年、一般社団法人ウィメンズ・フォーラムくまもとを設立し、理事に就任。




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