凸と凹「登録先の志」No.5:籠原潤一さん(NPO法人ORGAN 理事)


人と人とのつながりも含め、長良川流域の文化を残したい


ORGAN理事長の蒲さんと出会ったのは、岐阜のNPO法人G-net(※)に大学4年生のときにかかわったことがきっかけでした。就職活動が終わって、たまたま新聞で記事を見て関わるようになり、蒲さんや監事の田代さんと知り合いました。当時はライブイベントを開催したり、フリーペーパーを作成するなどして、岐阜の魅力を伝えていました。その後、G-netは人材育成、ORGANはまちづくりをしていきたいという方向性の違いから、2つの団体に分かれました。そこからぼくはORGANにかかわるようになり、銀行員としての経験も活かして会計業務も担ってきました。

ただ、ぼく自身は、長良川流域に愛や誇りを持ってというよりは、人とのつながりの中でかかわってきたという感覚の方が近いです。もちろん、もともと親が岐阜県郡上市の出身で、小さな頃から長良川で遊んできたというのはあります。ぼくも子どもが2人いて、川で一緒に遊ぶのは楽しいです。ただ、人と人とのつながりも含めて、長良川流域の文化や風景を、次の世代に残していきたいと思っています。蒲さんとは結婚した年が同じで、同級生の子どももいます。特にORGANの初期メンバーには年齢が近い人も多く、仕事の相談や、子育ての話、一緒に旅行に行ったりと、公私の区別なく、家族ぐるみの付き合いをしています。

最近力を入れているのは、ORGANで不足しがちな会員やスタッフとのコミュニケーションのサポートです。サークル型から事業型のNPOへと移行していく中で、60名ほどいる会員との接着剤としての役割ができるよう心掛けています。

※岐阜を中心に、地場産業・伝統産業・まちおこしなどの長期実践型インターンシップをコーディネートしているNPO法人。


理事長の蒲さんを支えないといけない


多くのNPOには、障がいのある方や貧困の方を助けるなど、わかりやすい課題解決の目標があると思います。ただ、ORGANの場合、都市と地方の経済格差の問題はあるかもしれませんが、他のNPOとは少し違うと感じています。豊かさはお金だけでないとはいえ、お金があるかないかでいったら、あった方ができることの幅が広がる。そういったジレンマも抱えながら、次世代に残していきたいものを考えています。

岐阜で残さないといけないもののひとつに、長良川が流れている風景があると感じています。長良川によって、和傘や和紙といった産業が育まれ、川があることで人が集い、「岐阜には長良川がある」って故郷を離れた時にその風景が鮮明に思い出せる。だからこそ、長良川流域の文化や自然を守ろうと奮闘している蒲さんを支えないといけないという思いに突き動かされます。自分自身、仕事で大変なとき、蒲さんを始め、このコミュニティに助けてもらいました。楽しいイベントごとは、より楽しく。かかわっている人が大変なときには、お互いに助け合う。それがサークルORGANの居心地のよさだし、これは本当にかけがえのないことだと思っています。


対話を重ねながら共感の輪を広げる


スタッフを雇用していることもあり、ORGANの活動は何としてでも続けていかなければならないと思いますし、それは理事としての職責だと感じています。ORGANを続けていくために、足りていない部分は補わなきゃいけないし、どういう役割を果たすかは常に考えています。これは、銀行という経営側に近い組織にいることもあるし、自分自身の性格に起因するのかもしれません。今、ORGANの中で足りていないのがコミュニケーションであり、対話だと感じています。ぼくが仕事をしている金融の世界でも昨今、金融庁や金融機関で「対話が足りない」と言われていますが、ORGANでも同じです。かかわる人たちの相互理解が不足して、お互いにどんなことを思っているか、どんなことを日々行っているかがわからない。特にORGANはステークホルダーが多いので、対話を重ねながら紐解いていくが、まずは大切だと思っています。

そうした積み重ねが結果、仲間集めにつながっていくと考えています。寄付募集もORGANの共感者に参画いただくひとつの機会として、相談しながら進めています。一人でも多くの方に参画していただけるよう、組織体制を整えていきたいです。


取材者の感想


本職では経営者の方と1対1で話すことがほとんどで、対大勢は苦手…と、ものすごく緊張した様子だった籠原さん。凸と凹「マンスリーサポートプログラム」登録先限定の集合研修での公開インタビューでしたが、ORGANや蒲理事長へのあふれる思いを熱く語ってくださいました。

ORGANの年に一度の総会は「おもてなしがすごい」と評判で、昨年の総会では会員同士が相撲をとったり、鵜飼にも繰り出したとのこと。そういったコミュニティづくりがORGANならではの特徴で、悩みながらも、事業推進とのバランスを取ろうとされている姿が印象的でした。(長谷川)


籠原潤一さん:プロフィール


NPO法人ORGAN 理事

岐阜県郡上市出身、岐阜市で育つ。南山大学在学中にNPOの世界に出会う。卒業後の2004年に地元の銀行へ入行。以後、中小企業向けの融資相談、経営相談に従事する傍ら、NPO法人ORGANの立ち上げに参画。長良川流域の魅力の発信や流域の地域資源の発掘にひかれ、理事として経営に携わる。取り組みを著したレポートは、第22回中小企業組織活動懸賞レポート本章を受賞。




NPO法人ORGANは、凸と凹「マンスリーサポートプログラム」の登録先です。


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