凸と凹「登録先の志」No.1:北川雄史さん(社会福祉法人いぶき福祉会 専務理事)


「いのち」という言葉が大好きで、「生き死に」をずっと意識してきた


父が福祉の仕事をしていましたが、親と同じことはしたくなくて、子どものころは医者になりたいと思っていました。高校生で「生き死に」について関心を持つようになり、ホスピスの本などをよく読んでいました。大学に入ると心理学を専攻してターミナルケアを学び、葬儀屋でアルバイトをしたり、葬儀の心理学的意義を卒論のテーマにしました。

家庭裁判所調査官の採用試験を受けるも受からず、大手印刷会社から内定をもらい入社。そこで取り組んだことがすべて、その後に活きていると感じています。退職後、名古屋にある福祉・医療の専門学校に入り、社会福祉士の資格を取得。いぶき福祉会には偶然見つけた求人がきっかけでした。

人生の最後よりも、「これから」をつくっていくところに関わりたいというのが、福祉の中でも障害者福祉を選んだ理由でした。最重度の人と出会い、医者にはなれなかったけど、「生き死に」を改めて意識するようになりました。

生まれたときに未熟児だったことから、拾ったいのちだと感じています。神戸の震災のときに、やさしい、感度の高い人ほど、心が強くなければいけないと思い、自分の命の使い方を考えるようになりました。仲間のために、という揺るぎない思いによって、さまざまな課題も乗り越えてくることができました。


障害のあるこの子らを世の光に


私はみんなが幸せそうにしている風景を見るとうれしくなります。地域の中でそんな風景が増えていくために、いぶきだからこそ果たせる役割があると思っています。障害のある人たちがいきいきと暮らしている姿は、社会に希望や安心をもたらします。

福祉はジブンゴトです。病気や障害はいつ誰の身に起こってもおかしくはありませんし、老いない人はいません。いま目の前にいる生きづらさを抱えている人を支えられる社会は、明日の自分たちの幸せにめぐってくるものです。

また、効率や生産性を指標とする活動から少し距離をおいた人間らしい営みは、経済至上主義と少し異なる新しい価値観を生み出すきっかけになると思っています。

「知的障害者福祉の父」として称えられる糸賀一雄さんが遺した「この子らを世の光に」という言葉にとても共感しています。そこには人間としての本質があり、みんなが安心して暮らせる社会にしていくことにつながるのだと考えています。

生きづらさを感じている人がすごく増えている今の世の中で、当たり前の営みに価値があることを共有していきたいと思っています。


どんな障害のある方も生き生きと暮らしていけるように、とことん寄り添う


幸い、いぶき福祉会は、地域関係も人材も経営でも、堅実に恵まれた環境で活動してくることができました。そんな法人だからこその役割として、障害のある方にとことん寄り添い、どんな障害のある方も生き生きと暮らしていける地域社会の実現のために行動したいと考えています。日々の運営や現場の支援に追われてしまうことは少なくありません。それでも流されたりすることなく、愚直に、利用者自身のことから目をそらさないことが大切です。

そして、そんな地域社会を実現するために、みなさんに一緒に参加していただきたいと願っています。それは海をきれいにするのと一緒です。海が全部つながっているように、みんなこの世界に一緒に生きています。実行する場、参加の機会をつくっていかないと、協働のチャンスも何も生まれてきません。社会が悪いと言うことは簡単ですが、無力感を感じることも多々あります。

障害があるからと、小さくほどほどで生きていくのではなく、そういう人こそ、生き生きと暮らしていける社会を一緒に創っていきませんか?


取材者の感想


高校生のころから「生き死に」をずっと意識してきたという北川さん。そこから今に至るまでがずっとつながっていることに、一つの物語を感じました。「一番幸せを感じるときは?」と質問すると、「みんなが幸せそうな風景を見て、自分が関わっている感じが持てたとき」と話し、「障害のあるいぶきの人たちがいきいきと暮らしている風景は社会の希望である」と力強く語る姿が印象的でした。

「期待や信頼をしてもらっているからこそ全力を注ぎたい」と話す北川さんに思いを託したくなる人がたくさんいるからこそ、今のいぶきがあるのだと思いました。そして、いぶきを応援することが、障害のあるなしに関係なく、みんなが安心して暮らせる社会の実現につながるのだろうという希望を持つことができる取材でした。(長谷川)


北川雄史さん:プロフィール


社会福祉法人いぶき福祉会 専務理事

1969年京都市生まれ、神戸育ち。筑波大学第二学群人間学類卒。大日本印刷株式会社から、社会福祉士取得後、1997年に社会福祉法人いぶき福祉会に入職。障害福祉に携わるようになる。従来の福祉の枠にとどまらず、福祉のつよみをいかしたブランド開発により、モノやコンテクストを創りだしている。地域でモノづくりを担う方々とのネットワーク活動などにも積極的に取り組む一方、最重度の障害のある人の社会参加、いのちの問題などを医療・教育と連携しながら向き合いつづけている。著書に『ねことmaruとコトコト~障害のある人の「働く」をつくる』きょうされんKSブックレット(共著)。




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