凸と凹「登録先の志」No.43:篠田花子さん(一般社団法人ヒトノネ 代表理事)
「行き場のない子どもたち」に気づいたことが原点
ヒトノネの活動は2018年に学童保育からスタートして、現在9期目を迎えています。放課後等デイサービスや学習に困り感のある子どもたちへの個別指導、10代の居場所事業(ユースセンター)と少しずつニーズに合わせて事業を拡大してきました。
以前は名古屋の採用支援会社で新卒採用やキャリア教育に携わり、仕事を通して「人がどのように進路を選び、社会と関わっていくか」を見つめてきました。転勤先の東京で長女を出産したことをきっかけに、その問いは一気に自分ごとになりました。当時は待機児童問題がひどく、保育園は120人待ち。岐阜にUターンしても、今度は学童保育が満員でした。
「放課後の時間はこんなに長いのに、子どもたちは行き場がない」。その違和感はやがて、「この時間をもっと豊かにできないか」という問いへと変わっていきました。地域の大人と出会い、体験から学ぶ場をつくりたい。そう思い、2018年に学童保育を立ち上げました。
始めてみると、そこには多様な子どもたちがいました。勉強に困難さを抱える子、学校の集団に馴染めない子、既存の枠からこぼれ落ちてしまった子どもたち。「こんなにも行き場のない子がいるのか」と気づいたことが原点となり、インクルーシブな居場所づくりへと歩みを進めていきました。
大人にとっての“行きつけの居酒屋”のような場を子どもたちにも
活動を続けるなかで、最初に出会った子どもたちは中高生へと成長していきました。同時に見えてきたのは、地域全体が抱える課題でした。岐阜市では、「夢や希望を持てない」と答える子どもの割合が高く、全国ワースト1だったことがあります。その背景には、多様な大人との出会いの少なさや、「決められたレールに乗ることが安心」という価値観の強さがあると感じています。そうした環境の中で、自分で選択しているという実感を持てない子どもたちが増えているのではないでしょうか。
そこで、認定NPO法人カタリバが実施する、10代の居場所づくりをサポートする「ユースセンター起業塾」に応募し、中高生の居場所「クリエイターズクラブ」を立ち上げました。ここには、学校に居場所がない子や社会的養護のもとにある子など、さまざまな子どもたちが集まります。
この場に集まる子どもたちの特徴は「群れない」ことです。無理に関係をつくらなくてもよい、でも顔見知りがいる。そんな“行きつけの居酒屋”のような関係性の中で、子どもたちは少しずつ他者と関わり、自分のやりたいことを見つけていきます。バーベキューを自分たちで企画し、助成金を獲得して1泊2日のキャンプを実現させたり、中学2年生の男の子が高校3年生の子の言葉に背中を押され、自分で納得して進路を選んでいく姿には、「人との関係の中で育つ力」が確かに表れています。
「小さなセーフティネット」を未来へつないでいくために
10代は、社会に出る直前の、揺らぎの大きい時期でもあります。そして日本では、その世代の自殺率の高さが深刻な問題となっています。子どもの自殺は、100%大人の責任だと思っています。だからこそ、「死なせないこと」はもちろん、その先にある「自分で人生を選び取る力」を育てていきたいです。
そのために必要なのは、特別な支援だけではなく、「人に頼れる」「誰かとつながっている」と実感できる日常の積み重ねです。ヒトノネの居場所には、卒業した若者がふらりと戻ってくることもあります。働きながら立ち寄り、また日常へ戻っていく。その循環が、地域の中に小さなセーフティネットを生み出しています。
現在、クリエイターズクラブの活動は助成金に頼る段階から、地域に支えられる仕組みへと移行しようとしています。「お互いさま」で支え合うこの場をこれからも続けていくために。子どもたちが安心して立ち戻れる居場所を未来へつないでいくために、ぜひこの取り組みに関わり、支えていただけるとうれしいです。
取材者の感想
印象的だったのは、「決められたレールに乗ることが安心」という価値観の強さが、子どもたちから夢や希望を奪っているという篠田さんの指摘です。大人がよかれと思って敷いたレールが、かえって子どもの選ぶ力を奪っているのかもしれない――そう気づかされました。
だからこそヒトノネが守り続けているのは、「群れなくてもいい」場なのだと思います。無理に関係をつくらせないからこそ、子どもたちは自分のペースで人とつながっていける。小さなセーフティネットを絶やさないためのヒトノネの挑戦を、地域のみなさんとともに応援していけたらと思います。
篠田花子さん:プロフィール
一般社団法人ヒトノネ 代表理事
「共に育ち合う社会を」をモットーに、岐阜市で探究型学童保育ヒトノネと放課後等デイサービスみちな、学習に困り感のある子ども向けImaru(アイマル)個別指導塾、中高生の居場所を運営。子どもたちが未来を信じて、その人なりの自立ができること、また、多様性を理解し助け合える社会をつくることを目指し、インクルーシブな場づくり、地域・企業と子どもたちをつなぐ活動に取り組む。キーワードは、キャリア教育、特別支援、探究的な学び、ユースセンター。保有資格は教育学修士(東京学芸大学大学院 教育学研究科 美術教育専攻修了)、公認心理師。
一般社団法人ヒトノネは、凸と凹「マンスリーサポートプログラム」の登録先です。
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