凸と凹「登録先の志」No.30:西部佳名恵さん(NPO法人ひだまり創 理事・事務局長)


「誰かの役に立てたらいいな」と志した介護の世界


ひだまり創で事務を担当し、人手が足りない時は、訪問介護員としての対応や、生きるをつくる事業の対応をしています。人の世話が好きで、「誰かの役に立てたらいいな」と思い、短大で福祉学科を専攻。卒業後は、特別養護老人ホームで12年働きました。利用者さんとのかかわりはとても楽しいですが、対応する人数も多く、業務に追われることもありました。もっとゆっくり接したいと思うようになり、グループホームに移ってからの3年は、利用者さんとの時間を大切にしました。

介護職として15年、介護の基礎を学び、多くの経験をする中で、介護職としての仕事だけではなく、介護に携わりながらも、できることはないかと考えるようになりました。そこで事務職として、高齢者とつながり続けようと思い、特別養護老人ホームの事務員を1年弱経験し、ひだまり創でのかかわりを始めました。

高校卒業後の進路で、人の世話をする仕事は何かと考えた時、子どもも高齢者も好きなので、保育士か介護士かのどちらを選ぶか悩んだ時期がありました。相談する中で、保育は少子化で今後対象となる人数が少なくなってしまうけれど、介護は高齢化が進み、高齢者の人数もどんどん増えていくから、介護の方がよいのではというアドバイスがありました。小学生の頃はよくおじいちゃんと一緒に出掛けることもあり、おじいちゃんやおばあちゃんが好きだったので、保育士より介護士の道を選ぶきっかけになったと思います。


人が生き生きしている姿を見るのは、みんなにとってうれしいこと


高齢者の支援は、日々変化していくものだと感じています。周囲の環境やかかわり方がすごく重要になり、かかわる人の支援が違うと、不安にさせてしまうこともあります。例えば、利用者のお迎えも、なじみの人が行くのと行かないのとでは、ご本人の緊張度合いが違い、行くのが嫌になってしまう方もいらっしゃいます。

そんなちょっとした環境やかかわり方の違いで、本当の自分を出せない利用者さんも、毎日通うことで、なじみの関係になり、自然と自分を出せるようになります。一緒に過ごしていく中で「笑顔が増えたな」と思えることがやりがいにつながっています。

おじいちゃんやおばあちゃんを見て「かわいいな」と思ったり、「こんなことしてあげたいな」と思ったりした経験は多くの方にあると思います。おじいちゃんやおばあちゃんが生き生きとしている姿をみると自分もうれしくなったり、元気でいてほしいと思うのは、誰しも同じではないでしょうか。


今の高齢者と未来の自分はつながっている


高齢者のやりたいことを応援できるような“居場所”を少しずつつくっていますが、「やりたい」という思いを引き出す段階の人もいれば、体調の悪化等が原因で、やりたいことができなくなったり、やりたいことがあっても一人で行動できずあきらめている方もたくさんいらっしゃいます。

高齢者の「やりたい」「できる」を生かせる “居場所”はまだまだ少ないと感じます。そういった場が近くにないと、意欲の低下や人と関わる機会が減り、家にひきこもってしまう恐れがあります。将来的には、自分たちも同じように高齢者になっていく中で、今のうちから「やりたい」や「できる」を生かせる “居場所”をつくることは、生き生きと楽しく生活できることにつながると思っています。

今の高齢者と未来の自分をつなげるために、「生きるをつくる」プロジェクトをぜひ応援してもらえるとうれしいです。


取材者の感想


これまでの活動の中で印象に残っている場面をお訊きしたら、こんなエピソードを教えてくれました。

「チャレンジ市という地域向けのイベントでおばあちゃんがつくったブレスレットを出した際、小さなお子さんが『これ、かわいい』と言って、ブレスレットをつけて笑っている姿を見た時にとてもうれしかったです。」

インタビュー中は終始緊張されていた西部さんでしたが、思い出しながら語る姿は、マスク越しにもうれしそうに微笑んでいらっしゃるのがわかりました。おばあちゃんやおじいちゃんが笑顔になると、周りの人も笑顔になって、その笑顔がまた他の誰かの笑顔につながる。ひだまり創さんは、笑顔の循環を生み出しているのではないかなと感じました。(長谷川)


西部佳名恵さん:プロフィール


NPO法人ひだまり創 理事・事務局長

短大卒業後、介護職員として特別養護老人ホームに12年、グループホームで3年、特別養護老人ホームの事務を経験し、2019年にNPO法人ひだまり創の事務担当として入職。23年6月に岐阜市に新たな拠点を創り、生きるをつくる事業(高齢者ものづくり支援)を開始。現在は法人事務を行いながら、生きるをささえる事業(訪問介護)や生きるをつくる事業を担当している。




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